「Composition: Horizontal Half / 水平構図」

 日の出前、真夜中の波打ち際に三脚をセットし、カメラを据えて撮影の時を待つ。波と風の音しか聞こえない孤独な時間、特にこの時間帯が満潮時と重なると、真っ黒な海に恐怖さえ感じる。しかし、かすかな光を頼りに、ピントグラスをルーペでのぞきながら構図を決めていると、この恐怖心もどこかに吹き飛んでいく。やがてかすかに東の空が明るくなるとき、撮影は始まる。

 この作品は、一瞬を捉えるのではなく、長時間の露光をすることにより夜から朝に変わる海と空の変化を一枚の写真に凝縮したいと考えた。長時間露光することで、動的な波は打ち消され、静かな水面となる。そして、空や海の織りなす微妙な青色表現と、太陽の光を受けた雲などが生み出す自然な形の美しさに注目し、こだわりを持って撮影した。

 当初より8×10インチカメラを使用し、カラーネガーフィルムに露光、自家現像処理を行っている。このシリーズを始めた頃には、ダースト社製の10×10インチの大型引き伸ばし機を使用し焼き付け処理をしていた。しかし、現在では、カラーネガをスキャニング後にデータ処理し、このデータを持って、同じくダースト社のラムダやシータで焼き付けしている。さらに、技術の進歩により、保存性を憂慮した場合には、インクジェットでプリントアウトするようになった。

 デジタル時代にあって、フィルムの調達にも苦労する時代になった。現状は、潤沢とはいえないフィルムを少しずつ放出して撮影している状況だ。しかし、どのような時代になっても、この作品にはネガフィルムという今となっては古い媒体が必要だと考える。なぜなら、ネガフィルムの持つラチチュードの広さは、そもそもデジタルとは比較することができないものである。そして、フィルムの持つ恐ろしい程の情報量の中には、撮影した際の風景だけではなく、空気感、あるいは大気といったアトモスフィアまで写し込まれているように感じるから。

(相田アキラ)

 

 

相田アキラ Akira AIDA

写真・映像作家。東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒、同大学院修士課程修了。研究領域は「現代美術へと昇華した写真・映像表現」についての先端的な表現研究について。JPS(日本写真家協会)奨励賞受賞。日本大学藝術学部写真学科・学科奨励賞受賞。共著に『芸術とメディアの諸相』芸術メディア研究会編〈タイケン〉がある。

URL : http://www.akiraaida.com

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